服
わかっている。
好きな服を着ると怖がられること。
わかっている。
それもありかつて人と馴染めなかったこと。
わかっている。
最近はずっと「当たり障りの無い服」を着ていた。
自分らしさ、よりも、他人様がどんな気持ちになるか、苦痛はないか、コンプレックスを刺激しないか、思考回路に余計なノイズが入らないか、なんかを考えるようになっていた。
昨年11月にあの件があってからは、もっと。
胸なんか太っていればなんとなくあるし、顔は三流。それでも愛をくれる方々がいるから、嬉しくて、応えたくていたのに、だめになってきていた。自分の存在さえも恥ずかしくて、無様なもんだった。
昨晩、久しぶりに着たい服を着た。
髪をセットして、今月初めて口に紅を引いた。
結果、自分らしく笑っていられる時間が多かった。
あぁ。
これを手放すのは、いやだな、と、思った。
誤解もされるだろう。
誰かのコンプレックスをいたぶるだろう。
気安く欲を刺激して自分に刃が向く事もあるだろう。
いまだ、それは、みんな、いやだけど。
好きな服を着て、好きな人達と笑い合う。
好きな服を着て、好きな歌を歌う。
好きな服を着て、好きなものを食べる。
好きな服を着て、好きな人と夜道を歩く。
幸せだと思った。
そっちの方が強かった。
そこに「私なんか」は無かった。
そこに「攻撃されない為の防御」は必要なかった。
昨晩あったことが、考え方を柔らかくしてくれた。
これ、この身体、この仕草、この身のこなし、この雰囲気、この声、この自分、これ、私らしさのかけらが集まって、かたちになったものだ。
私にしかない世界のようだ。
消してしまったら、どこにも、いなくなるんだ。
なんだか、そう思ったら、こっちの私のことも、大切にしてあげたくなった。
当たり障りのないものを選べる自分。
こだわりを捨てずに世界観を守る自分。
欲張りだから。
どっちも、やっていこう。
ワイン会は、ご縁だけじゃなく、大切な気持ちを思い出させてくれるいい夜だった。
みなさん、ありがとうございました。
あまりお話できなかった方々は、またご縁巡ってくると信じて、その日を待ちます。
いつもお洋服を大切にする方々を美しいと思って見ている。
彼ら彼女達が教えてくれた気持ち。
着たい服を着る。
自分が選んだ自分を信じて。
系統は違えど、私も見習ってゆく。
これからは、たまに、着よう。